パチスロ学者、スロ沢諭吉の「ハイエナのすゝめ」~スロ愛に満ちあふれたブログ

パチスロが大好きで、楽しみながら勝ちたい人に贈るブログです

絶対笑わないパチンコ店長が笑った話(思い出話シリーズ)

 その店の店長は、常に苦虫をかみつぶしたような顔をしていました。スロ沢が学生だった二十数年前の話です。

 両手を背中の後ろで組み、少し猫背で、客や台に鋭く目を配りながら、ゆっくり店内を巡回します。50代くらいで、体格は中肉中背、その頃の店長にありがちなパンチパーマでもなかったのですが、威圧感がありました。


 実際、怖い店長でした。3分の1で確変突入、2回ループのCR機人気の火付け役となった「CR黄門ちゃま2」を打っていた時のことです。スロ沢の後ろを通り過ぎた店長が足を止め、後ろで手を組んだまま、ハンドルを握るスロ沢の手元を険しい目つきでじっと見ているのです。


 この機種は、体感器と呼ばれる機械を使って大当たりを狙い打ちできる攻略法があり、シマ全体が店の警戒対象になっていました。攻略法を実行するには、玉を一発ずつ打つ「単発打ち」が必要で、玉の打ち出しを止めるストップボタンを頻繁に押さねばなりませんでした。


 スロ沢は攻略法を使わず、回る台を普通に打っていただけなのですが、保留玉が満タンになるたび、ストップボタンで打ち出しを止めていました。そのため、怪しまれたのだと思います。


 十数秒も見られていたので、たまりかねて「ストップボタンを使ったらだめですか」と聞いてみました。店長は険しい顔のまま「変な打ち方してへんか、見てるだけや」と一言。「普通に打っていたらいいんですよね」「おお」。そんなやり取りで疑いは晴れたのでしょう。くるりと背を向けて、やはり手を後ろで組んだまま、去っていきました。もし、攻略法を使っていたとしたら、事務所に引きずり込まれてボコボコにされていたかもしれないー。そんな怖さを感じました。


 新装開店の日のことです。機種名は忘れましたが、あるパチンコ台を抑え、開店ミュージックが鳴り出すのを待っていました。


 この機種のメーカーのハンドルには当時、玉が1個収まるくらいのくぼみがあり、そこに玉を詰めると、ハンドルが固定できるようになっていました。固定すると、手を離しても、玉が飛ぶのです。でもこの店では、固定は禁止されていました。


 ところが、スロ沢の抑えた台のハンドルを見てみると、くぼみに玉が挟まっていたのです。周りの台にはなし。店が前日に釘調整した時に固定したのが、そのままになっていたのでしょう。


 すると、店長が目ざとく見つけて、鬼の形相でつかつかと近づき、「ハンドル固定したらあかん」と怒鳴りました。


 「元々固定されていましたよ」。反論しましたが、店長は聞く耳を持たず、「ここに書いてある」と、「ハンドル固定禁止」と書かれた張り紙を指さし、乱暴にハンドルを動かして玉を取り除きました。


 そんな嫌な思いもしましたが、パチンコはよく回り、パチスロは設定が入る優良店でしたから、通わない手はありませんでした。もちろん、たくさん勝っていましたから、店長はスロ沢を「目障りなガキだ」とマークしていたのかもしれません。笑顔など一度も見たことがありませんでした。


 そんな店長が笑ったのを見たのは、たったの2回だけです。


 ある店休日のことです。たまたまスロ沢が店の前を通りかかると、制服の警察官が二人、店から出てきました。「何かあったのかな」。足を止めて見ていると、続いて店長が外に出てきました。いつもの仏頂面は影を潜め、満面の笑みを浮かべ、平身低頭で警察官らに何やらお礼を言っているようでした。初めて見る笑顔でした。いや、笑顔というより、媚び笑いのお手本のような卑屈な笑みと言った方が適切でしょう。「お主も悪よのう」「へっへっへっ、お代官さまも」。時代劇で悪代官に賄賂を贈る悪徳商人のあの笑顔です。


 おそらく、新台入れ替えの検査か何かで来た警察官が帰るのを見送りに出てきたのでしょう。


 ご存じの通り、パチンコ業界の監督官庁は警察なので、機嫌を損ね、目をつけられたくなかったのでしょうね。あの気色悪い笑みは、パチンコ業界と警察との力関係を雄弁に物語っているように感じたものでした。


 もう1回は、何とも俗っぽい話です。店内で女性店員のケツをなで回していた時のことでした。嫌らしい笑みでした。その日から、パチンコ仲間の間で、店長の呼び名は、「⚫⚫(店名)の店長」から、「エロ店長」へと昇格(昇格?)しました。


 その店はすでに閉店し、商業施設になっています。店長は生きていれば80歳くらいでしょう。


 それにしても、当時のパチンコ店は、このような怖い店長、店員がたくさんいました。「ルールやマナーに違反する客は容赦なく叩き出すぞ」。そんなピリピリした空気が張り詰めていました。そのおかげて店内の規律が保たれていた側面もありました。


 これに対し、今のパチンコ店は、店員はいつもニコニコし、威圧感がありません。スロ沢が大嫌いな掛け持ちやペナ打ち、どつきなどのルール違反、マナー違反をする客を見て見ぬふりする店員もたくさんいます。「あの店長ならきっと、追い出してくれただろうな」。そんなふうに、懐かしく思い出したりします。